B型肝炎から癌

B型肝炎から癌

肝細胞癌

肝細胞癌 肝細胞癌は肝臓に発生する悪性腫瘍ですが、ウイルス性の慢性肝炎や肝硬変から肝細胞癌になる人が全体の90%近くで男女比は3:1で男性に多く、発症の平均年齢は60歳代前半というのが特長です。
最近の肝細胞癌の死者数は、毎年全国で3万人台が続いており増加傾向が見えます。
また、肝細胞癌の死者数は肺がん・胃がん・大腸がんに次いで第4位となっています。
肝細胞癌の約90%はウイルス性の慢性肝炎や肝硬変から進行したものですが、C型肝炎を原因とする患者が約70%~80%を占めB型肝炎を原因とする患者が約10%~20%を占めると言われています。従って、毎年約3万人の肝細胞癌の死者の内、約3,000人~5,000人程度がB型肝炎を原因とする患者と考えられます。

肝細胞内で長期に渡って炎症と再生が繰り返されるうちに遺伝子の突然変異が積み重なり肝細胞癌に進行していると考えられます B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性の肝炎患者は、肝細胞内で長期に渡って炎症と再生が繰り返されるうちに遺伝子の突然変異が積み重なり肝細胞癌に進行していると考えられます。

肝細胞癌発生の詳しいメカニズムは未だ解明されていません 只、肝細胞癌発生の詳しいメカニズムは未だ解明されていません。
そして、B型肝炎ウイルス由来の肝硬変の場合、10年後の肝細胞癌の発癌率は約30%でその後も発癌率は増加しません。しかし、C型肝炎ウイルス由来の肝硬変の10年後の肝細胞癌の発癌率は約50%でその後も発癌率は増加していきます。

肝細胞癌の症状と検査方法

肝細胞癌の症状と検査方法 B型肝炎ウイルス由来の肝細胞癌の場合は、殆どの患者はB型慢性肝炎やB型肝炎ウイルス由来の肝硬変を経験していますから、肝細胞癌を発症してもそれ程の驚きはありません。
正確なデータは無いにしても、B型慢性肝炎やB型肝炎ウイルス由来の肝硬変から10%~20%程度の確率で肝細胞癌に進行することは覚悟しているからです。
また、肝細胞癌の症状は初期に於いては殆ど自覚できる症状はありません。只、末期になると黄疸や腹水などの肝硬変と同様の症状が表れることになります。
そして、肝細胞癌の検査もB型慢性肝炎やB型肝炎ウイルス由来の肝硬変患者の場合は、掛かりつけの医師から定期的な検査を指示されている筈です。
最も重要な検査としては、AFP(アルファフェトプロティン)やPIVKA-Ⅱなどの腫瘍マーカー検査と長音波検査(エコー)やCT・MRI血管造影検査を併用することです。特に、腫瘍マーカーのAFPが異常値を記録した B型慢性肝炎やB型肝炎ウイルス由来の肝硬変患者の場合は、肝細胞癌が発症したことに間違いありません。

肝細胞癌の進行度と主な治療法

肝細胞癌の進行度と主な治療法 肝細胞癌の進行度は3つの要素で判断されます。3つの要素とは腫瘍の「大きさ」「数」「血管への浸潤」で、これらの程度により肝細胞癌はステージⅠ~ステージⅣに分類されます。
勿論、1個の小さい癌がステージⅠとなりますが、稀に小さな1個の癌でも血管への浸潤が進んでいる場合はステージⅢからⅣに分類されることもあります。逆に大きな癌の場合でも、単独で血管への浸潤が無い癌はステージⅡに分類されることもある訳です。
また、リンパ節や他の臓器への転移が認められる場合は、進行性の癌として扱われることになります。
そして、肝細胞癌が発見された場合の治療法は、「手術」と「経皮的治療」と「肝動脈塞栓術」の3つです。まず「手術」は比較的早期の肝臓癌に適用されます。癌の数が3個以下で肝機能が良い状態であることが条件になります。また、比較的大きな癌であっても、血管への浸潤やリンパや他の臓器への転移が認められない場合も「手術」が試みられます。
「手術」は専門医が直接、目で見て判断できるのがメリットで、周囲の肝組織を含めて病巣を摘出できますから確実な治療法と言えます。特に、「ゴッドハンド」と言われている肝臓外科専門医の手術は、5年後の生存率が高くなっています。
「経皮的治療」はエタノールやラジオ波熱を癌組織に注入し、癌組織を破壊する治療法です。患者の肝機能が悪く手術できない場合に用いられます。
「肝動脈塞栓術」は言わば癌組織を兵糧攻めにする治療法で、肝臓動脈に薬剤を注入して癌組織を兵糧攻めにします。
しかし、この様な肝細胞癌の3つの治療法は対処療法的なものであることは否めず、完全に肝細胞癌を駆逐できるものではありません。肝細胞癌が発生する詳しいメカニズムが解明されていない以上、別の部位に何時新しい肝細胞癌が発生するかは予測が付かないからです。
従って、肝細胞癌の手術後の予後は、5年後生存率が50%~60%となっています。中には手術後1年間に4回の再発を経験した患者も報告されています。
各ステージ毎の5年生存率は、ステージⅠが約80%・ステージⅡが約60%・ステージⅢが約50%・ステージⅣが約40%ですが、ここ10年間で10%以上の改善が見えます。
そして、今後は「癌ペプチドワクチン療法」などの新しい「癌免疫療法」に期待が掛かります。それらの「癌免疫療法」は癌の発生を抑え、癌細胞を根こそぎ駆逐する根治療法と言えるからです。