B型肝炎訴訟の必要書類

B型肝炎訴訟の必要書類

和解までの流れ

和解までの流れ 2006年の最高裁判決によりB型肝炎訴訟の国の責任が確定し損害賠償の支払いが行われました。その結果、2008年3月以降、700名以上の被害者から集団提訴が行われ、2011年6月に国と原告団・弁護団の間で「基本合意書」が締結されました。
従って、それ以降多くの被害者が和解手続を進めており、今後も多くの被害者が和解協議を始めることが予想されます。

まず、和解までの流れは以下の通りになります。
和解までの流れ ①カルテや診断書などの医療記録等の医療機関への請求
②医療機関からの医療記録の提出
③弁護士事務所を見つけ国を相手に国家賠償請求訴訟を提起
④和解協議手続で和解が成立し和解調書が作成される
⑤社会保険診療報酬支払基金へ給付金等の支給の請求
⑥給付金等の支給

給付金等の支給を受けるための要件

給付金等の支給を受けるための要件 今回のB型肝炎訴訟の救済対象となるのは、国が主導してきた集団予防接種における注射器等の連続使用によって感染したと認定された方及びその方から母子感染した方とそれらの相続人です。そのため、集団予防接種等とB型肝炎ウイルス感染との因果関係の認定が必要となります。従って、以下の要件を満たすことを示す証拠を収集しなければなりません。

一次感染者が救済要件を満たすことを証明するための資料 ① 一次感染者であることを証明するための要件
集団予防接種等により、直接、B型肝炎ウイルスに持続感染した方(一次感染者)の認定については、以下の要件を全て満たすことが必要です。
・B型肝炎ウイルスに持続感染していること
・満7歳になるまでに集団予防接種及びツベルクリン反応検査を受けていること
・集団予防接種等における注射器の連続使用があったこと
・母子感染でないこと
・その他の集団予防接種等以外の感染原因がないこと

② 二次感染者であることを証明するための要件
一次感染者である母親からの母子感染によりB型肝炎ウイルスに持続感染した方(二次感染)の認定については、以下の要件を満たすことが必要です。
・原告の母親が上記の一次感染者の要件を全て満たすこと
・原告がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
・母子感染であること

一次感染者が救済要件を満たすことを証明するための資料

一次感染者が給付金等の支給を受けるためには、各要件を満たしていることを以下の資料によって証明することが必要です。

・要件1 B型肝炎ウイルスに持続感染していること(B型肝炎ウイルスに持続感染して  いる方が救済対象のため、一過性の感染歴があるだけでは救済対象とはなりません)
必要書類 「HBs抗原陽性」
「HBV-DNA陽性」
「HBe抗原陽性」(6ヶ月以上の間隔をあけた連続した2時点における検査結果)
「HBc抗体陽性」(高力価)

・要件2 満7歳になるまでに集団予防接種を受けていること(2006年最高裁判決において、B型肝炎ウイルスに感染したのち持続感染化するのは、免疫機能が未発達な幼少期(遅くとも6歳頃まで)に感染した場合であるとされました。今回の和解の枠組においても、このことを前提として因果関係を判断しますので、満7歳の誕生日の前日までの間に集団予防接種を受けていることを確認する必要があります)
必要書類 「母子健康手帳」
「予防接種台帳」
「母子健康手帳」または「予防接種台帳」を提出できない場合は
・その事情を説明した「陳述書」(親・本人が作成)
・接種痕が確認できる旨の「医師の意見書」(医療機関において作成)
・住民票または戸籍の附表(市区町村において発行)

・要件3 集団予防接種における注射器の連続使用があったこと(本件訴訟における国の責任期間は「予防接種法」の施行日である1948年7月1日から、注射針・注射筒の1人毎の取替えを指導した1988年1月27日までの期間とされています。従って、この期間内に集団予防接種等を受けたことが確認できれば、特段の事情がない限り注射器の連続使用が行われていたと認められます)
必要書類 「母子健康手帳」
「予防接種台帳」
「母子健康手帳」または「予防接種台帳」の記載により、1948年7月1日から1988年1月27日までの間に集団予防接種を受けたことを確認します。
「陳述書」及び「接種痕意見書」
1941年7月2日から1988年1月27日までの間に出生していることを確認します。(つまり、満7歳になるまでの間に集団予防接種を受けたことが有ることを確認します)

・要件4 母子感染でないこと
母子感染は乳幼児期のB型肝炎ウイルス感染を引き起こす最も有力な原因と考えられています。従って、集団予防接種とB型肝炎ウイルス感染との因果関係を主張するに当たっては、母子感染でないことを立証することが必要となります。
必要書類 母親のHBs抗原が陰性かつHBc抗体が陰性(または低力価陽性)の検査結果

・要件5 その他集団予防接種以外の感染原因がないこと
B型肝炎ウイルスは母子感染以外にも輸血による感染、父親などからの家族内感染、性交渉による感染など様々な感染経路が考えられます。つまり、このような感染経路によって感染したものであると確認された場合には、予防接種との因果関係は否定されるため救済対象とはなりません。従って、「基本合意書」に於いて提出することとされている一定の時期のカルテ等において、この様な感染経路が見当たらないことを確認することが必要です。
必要書類 カルテ等の医療記録(集団予防接種とは異なる原因が存在する疑いがないことを確認するために必要)
父親がB型肝炎ウイルスの持続感染者である場合(父親と原告のB型肝炎ウイルスの塩基配列を比較した血液検査)
原告のB型肝炎ウイルスがジェノタイプAeではないことを証明する検査結果(ジェノタイプAeのB型肝炎ウイルスは平成8年以降に感染例が報告されており平成7年以前に持続感染が判明している場合はジェノタイプ検査は不要。逆に言えば、平成8年以降に感染した人でジェノタイプAeの場合は、集団予防接種以外の要因で感染した可能性があると言える)

二次感染者が救済要件を満たすことを証明するための資料

母子感染である場合は集団予防接種等による感染ではありませんが、集団予防接種等でB型肝炎ウイルスに感染した女性(一次感染者)が出産する時に母子感染が起る可能性があります。この場合、母子感染によりB型肝炎ウイルスに感染した原告の方についても救済対象になります。

・要件1 原告の母親が一次感染者の要件を満たすこと母子感染によりB型肝炎ウイルスに感染した原告の方が救済対象となるためには、原告の母親が予防接種により感染した一次感染者であることが認められる ことが必要です。
必要書類 原告の母親が一次感染者として認定される要件を全て満たしていることを証明する資料

・要件2 当該原告が持続感染していること

必要書類 原告本人がB型肝炎ウイルスに感染していることを証明する資料

・要件3 母子感染であること
一次感染者である母親からの感染であることが、医学的知見を踏まえて確認されることが必要となります。
必要書類 原告が出産直後にB型肝炎ウイルスに持続感染していたことを示す資料
原告と母親のB型肝炎ウイルスの塩基配列を比較した血液検査結果

病態の認定

病態の認定 和解をする場合の病態区分は以下のとおりで、それぞれ一定の基準に沿って病態を判断することになります。言うまでも無いことですが、いずれの病態もB型肝炎ウイルスの持続感染に起因するものであることが前提条件になります。

死亡 原告の死亡がB型肝炎ウイルスの持続感染と相当因果関係があると認められる場合
肝癌 医師の診断書+診療記録+画像検査記録+血液検査報告書+病理組織検査
肝硬変 医師の診断書+診療記録+画像検査記録+血液検査報告書+病理組織検査
慢性肝炎 6ヶ月以上の間隔を置いた2時点に於いて、連続してALTの異常値が見られる場合
無症候キャリア 死亡・肝癌・肝硬変・慢性肝炎に該当しない場合