輸血によって肝炎が起ることは以前から臨床的には認知されていました。例えば、1954年にビキニ環礁で水爆実験が実施され、被爆した第五福竜丸の乗組員に高頻度で肝臓がんなどの肝臓疾患が発症しました。この時、放射線障害の治療のために大量の輸血が行われており、輸血によって乗組員が肝炎に感染したことが後に指摘されています。
また、1964年にライシャワー博士が日本で暴漢に襲われ輸血した際も肝炎に感染し、日米の社会に大きな衝撃を与えました。
この両事件は輸血によって肝炎が起るということと、売血で支えられていた輸血用の血液の質が悪いことを世に知らしめました。
その後、1970年にB型肝炎ウイルスが発見され、1982年に我が国にHBs抗原検査が導入され、B型肝炎ウイルス検査が一般的に広がり始めました。従って、輸血や医療処置によるB型肝炎ウイルスの感染はこれ以降激減していきます。
現在、肝炎にはA型肝炎・B型肝炎・C型肝炎・D型肝炎・E型肝炎が存在しますが、特に、B型肝炎とC型肝炎は血液感染することが知られています。一方、A型肝炎とE型肝炎は経口感染ウイルスと言われています。
従って、B型肝炎とC型肝炎は感染者の血液に触れない限り感染しませんが、感染者の体液や唾液に血液からウイルスが染み出していることがあるため、性行為によって感染するリスクがあると言えます。
また、現在では輸血によってB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染することはありませんが、輸血や血液製剤を使用する際には患者の同意書を得ることが義務付けられています。その同意書には、未知のウイルス性疾患に感染するリスクがあることが明記されています。
つまり、今後、輸血や血液製剤を使用することにより、新たな未知のウイルス性感染症に感染するリスクはあると言えます。